3.英語習得のポイントは英文法
言語の核は文法にある
では、このレベルに達するには、すなわち、自分の言いたいことを片言でも言えたり、あるいは初めて聞く英語の内容が少しでも分かったりするには、何が必要でしょうか。答えははっきりしています。英語の仕組み、すなわち英文法を身につけることです。
ふつう母語を使っている時には、文法はそう意識されません。しかし、意識するにせよ、しないにせよ、私たちは文法にしたがって言語を使っているのです。言語の核は文法にあると言えます。
「私と太郎を夕食は食べた」という変な日本語を訂正できるのも、日本語の文法を理解しているからです。同じように、Linda called Tom. と、Tom called Linda. では意味が違うこと、また、Linda Tom called. では意味をなさないこと、これらは英文法を理解しているから分かるのです。
英語が使えるようになるには、基本的な英文法の理解が欠かせません。そしてこの基本的な英文法というのは、少なくとも中学校で習う英文法くらいを意味すると考えられます。このレベルの英文法の必要性を否定する人はまずいません。「中学英文法を使えば、こんなに会話ができる!」というようなタイトルの本が書店にも多く並んでいます。
英文法重視が最近の流れ
保護者の皆さまの中には、「読解や英文法ばっかりやっているから、日本人は英語が使えるようにならないって聞いたけど?」などと、思われる方もいらっしゃるでしょう。マスコミでも同様の意見が採り上げられますから、無理もないことです。
しかしながら実は、英文法を重視すべきだという意見をこのところよく目にするようになりました。英文法重視は今後の確実な流れだと見て間違いないでしょう。少し前までは「英会話重視」一辺倒だったことを思えば大きな違いです。
この背景を一言で説明するのは難しいのですが、誤解を恐れずに言えば、「使える英語」のイメージが、「一見流暢なひとこと英会話」から、「とにかくきちんと内容をやり取りできる力」へと変わったのだと思います。たとえば、次のような指摘があります。
…… 英語を専門スキルとしないビジネスマンにとって、英語を必要とする場面は以前はこんな感じだった。『海外から外国人がやってくる。もちろん英語に堪能な通訳がつくけれども、あいさつや接待の場での簡単な会話くらいは自分で英語を使ってやりたい』。それが、今では次のような場面でも英語が必要になっている。『インターネットで何かを調べていると、関連情報が英語で書かれていることがある。海外との簡単なやり取りをemailで行うこともある。そんなに難しい内容ではないので、いちいち英語が得意な人に頼むなんてできないが、自分の英語にも今ひとつ自信がない』。つまり、インターネット上で英語を読み書きする機会が多くなったために、英文法の大切さを痛感する人が増えてきているのだ。……
コミュニケーション重視の反省点
「日本人は英語の読み書きは案外できる。ただ、英語を話す力が足らない」。こんな批判が、昔はよくありました。そして日本の英語教育が読解や英文法に偏っていることが、その原因だとされたのです。
そこで日本の英語教育は、コミュニケーション重視のかけ声のもと、場面英会話のようなものを多く取り入れることになりました。それと同時に、体系的に英文法を学ぶ機会は減ってしまいました。したがって「学校では英文法ばかりやっている」というのは、もうずいぶん前から実態とはちがう誤ったイメージなのです。
さて、この英語教育の転換によって、話す力が伸びたのなら救われるのですが、これを裏付けるデータはありません。そればかりか、英文法の力がガクンと落ちてきていること、それによって読解力も低下していることを指摘する英語教育関係者はたくさんいます。そもそも話す力についても、英文法を理解しないことには、ひとこと英会話の丸覚え以上には上達しません。
確かに「重箱の隅をつつくような」と批判される英文法の問題が、学校のテストや受験に登場することはよくないでしょう。採点のしやすさという観点から英文法問題はペーパー試験向きであり、その結果として英文法学習が自己目的化する、つまり「英文法のテストのために英文法を学ぶ」という傾向に陥りやすいことは事実だと思います。
ただ、だからといって、英文法を学ぶ必要がないわけでは決してありません。要は、「英語を使う」ことを意識して英文法を学ぶことが大切であり、英文法重視派の多くも「英文法の学び方は変えるべきだ」と言っています。基礎的な英文法を学びながら、それを使った基礎的な英文をアウトプットする練習が欠けていることが問題なのです。