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5.英語を外国語として学ぶ

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外国語には外国語にふさわしい習得方法がある

 繰り返しになりますが、前項で述べたことをまとめてみます。

 日本でふつうに生活する人にとって英語は外国語です。これが母語のように自然に身につくと考えるのは現実的ではありません。なぜなら、英文法を自然に学び取るための十分な言語体験が得られないからです。英文法は英語習得に欠かせないものであり、英文法を身につけない限り「英語が身についた」と言えるレベルに達することはありません。

 しかし悲観する必要はありません。「母語のようには身につかない」ということは、裏を返せば「母語のように身につける必要はない」ということです。母語には母語の、そして外国語には外国語の習得方法がある、と割り切って考えるべきでしょう。

考え方の違いがレッスンにどう影響するか

 「自然に英語を身につけよう」という考え方は、基本的には母語の習得過程を再現しようという考え方です。ネイティブスピーカーの子どもが英語を身につけていく過程をモデルとしていますから、英語を「意識して学ぶ」という状態をむしろ好ましくないものと考えたり、お絵かきなどのアクティビティを通じて英語に触れさせようとする傾向があります。

 このようなレッスンは楽しそうですし、一見合理的にも見えます。そして、最初にも書きましたが、「英語が母語のように、知らず知らずのうちに身につく」という言い方には神秘的な魅力があります。

 しかしながら、外国語習得において母語環境をモデルとしている点で、やはり無理があるのです。その無理が具体的に表れる例が、たとえば「意味をどう理解させるのか」という問題です。

日本語を介さずに理解させることが可能か

 たとえば、mother という単語を絵カードで教えるとします。赤ちゃんを抱っこした女の人が描かれているような絵カードです。子どもたちはすぐに mother という単語が「お母さん」を意味することを理解するでしょう。もちろん「お母さん」という日本語を使わずに可能です。

 しかし、これは英語のネイティブスピーカーが mother の意味を理解する過程とは全く異なります。子どもたちは既に「お母さん」という日本語とともに、「お母さんという概念」を理解しており、その概念に mother という英語を結びつけているだけなのです。そして、日本語を見える形で使わずに済んだのは、motherが絵カードで表しやすい英単語だったからです。

 おそらく「cousin=いとこ」となると、絵では表しにくいので、結局は日本語を使うことになるでしょう。たとえ、絵やジェスチャーを使って何とか意味を伝えたとしても、子どもたちが「いとこ」という日本語を通して理解していることは明らかです。

 百歩譲って、上のような単純な名詞については日本語を介さずに理解できるとしても、動詞や時制などについては不可能でしょう。「日本語を介さずに英語を理解する」という状態は、外国語として英語を学ぶ環境においては、簡単に実現できるものではありません。実現できているように見えても、実際には絵カードやジェスチャーを日本語の代用として使っているにすぎないのです。だとすれば、この点に貴重な時間を割く必要はない、というのが私たちの考えです。

日本語で意味を認識した上で、練習するのが合理的

 この過程を、「日本語を介さずに、英語を英語のまま理解する練習として大切だ」という意見もありますが、母語環境をモデルとすることに固執しすぎていると思います。「意味の認識」という最初の段階において、日本語を介在させたとしても、練習の絶対量を確保すれば、いちいち日本語を頭に置くことはなくなります。

 たとえば、多少の学習経験を持った子どもたちなら、 What's your name? - My name is Takashi. というやり取りを英語で行うときに、日本語をいちいち頭に浮かべることはないでしょう。これが、When is your birthday? でも、What are you going to do this weekend? でも、練習量が確保されていれば同じだと思います。

 それなりの英語力がある大人であれば、簡単な英文を読むときにいちいち日本語に置き換えることはありません。また、英語を話す場面でも、使い慣れている表現ならば日本語を意識することはないでしょう。要は、意味を理解した後に、練習の絶対量をしっかりと確保することが大切なのだと思います。実際のところ、「日本語を介さずに英語を学ぶべきだ」という考え方は、大人の英語学習においてはもやは主流ではありません。

 「英語は自然に身につくのか」については、私たち自身にも迷いがありました。いろいろと考えた末、「自然には身につかない。英語習得は意識的な学習の成果だ。」と結論を出し、レッスンのやり方を大きく変えました。そして、私たちの考えに合う教材がなかったので、自分たちで作ることにしたのです。

 以来、目に見えてレッスンの成果が上がるようになりました。意味を理解させることに無駄な時間を使わないので、口頭練習により多くの時間を割くことができるようになったのです。このあたりの話は、教材販売の「開発ストーリー」にも書いています。よろしければお読みください。


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