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5. 「身につくレッスン」を考え直す

「何を、いつ、どうやって教えるのか」をテキスト上ではっきりさせる。

 さて、前項で述べた「楽しいレッスン」と同じように、多くの英語教室が「身につくレッスン」をその特長としてアピールしています。ただ、私たちの掲げる「身につくレッスン」は、かなり効率的で意識的なものです。それは、英語習得は意識的な学習の成果だ、と私たちが考えているからです。

 「身につくレッスン」。その意味するところを素直に解釈すれば、「成果の上がるレッスン」という意味でしょう。しかし、成果を上げるための方法が具体的に示されているケースは少ないように思います。かつての私たちもそうでした。当時の私たちは、「英語はどのようにして身につくのか」という根本的な問題について、明確な答えを持っていませんでした。「自然に身につく」ということに、まだ期待を寄せていたのかもしれません。ところが、先にも述べた通り、学習内容が「初歩の初歩」で停滞してしまう、つまり一定レベル以上の力がなかなか身につかないという状況に直面したのです。そして、これをどう解決するのかを考える中で、私たちは「英語が外国語である以上、それが自然に身につくと考えるのは現実的ではない。英語習得はあくまでも意識的な学習の成果だ」という結論に達しました。そして、意識的な学習によって英語を身につけるという立場から、「身につくレッスン」を改めて考え直すことになりました。

 ちょうどその頃、保護者の皆さまからも「何を習っているかが分かりにくい」「習熟度が知りたい」などの要望をいただいていました。対応策として、個人レポートを作成したりもしました。しかし、そもそも「何を、いつ、どうやって教えるのか」という点が曖昧だったので、習熟度については十分な評価ができず、学習態度についてコメントする程度のレポートしかできませんでした。英検を受けていた時期もあります。しかし、モチベーションを高める効果は多少あったにせよ、これも習熟度の目安としては不十分でした。結局のところ、保護者の要望に真正面から応えることができなかったのです。

 意識的な学習とは、学習者自身が「いま何を習っているのか」および「それが身についているのか」を意識しながら学ぶ、ということです。これは、算数でも、習字でも、ピアノでも、サッカーでも、何かを意識的に身につけようとする場合には、当たり前のことなのです。ところが、語学学習、特に児童英語においては、学習項目やその成果が目に見えないものとされる傾向があるように思います。やはり、「自然に身につく」という考え方がここでも影響しているのでしょう。意識的な学習によって英語を身につけようとする以上、この点をまず変えなければならない、と私たちは考えました。そして「レッスンの内容やその成果を、目に見えるようにする」ということに取り組んだのです。

 私たちはテキストが重要だと考えました。「何を、いつ、どうやって教えるのか」。これがテキスト上ではっきりと示されていれば、意識的な学習の拠り所となるだろうし、保護者からの要望にも応えられると考えたのです。私たちは市販されているさまざまなテキストに目を通しました。しかし、必要なことだけをシンプルに教えたい、という私たちの希望に合うものは見当たりませんでした。そこで、私たちは、「子どもたちにとって学びやすく、先生にとって教えやすく、保護者にとって学習内容が分かりやすい。」をコンセプトとしたテキストを、自分たち自身で制作することにしたのです。これが、私たちが「身につくレッスン」を目指した第一歩でした。

 なお、各テキストの詳細については、それぞれの紹介ページをご覧下さい。

意識的に学ぶ ― 日本語訳を与えるべきか否か。

 さて、「意識的に学ぶ」について、もう一つ考えておきたいことがあります。それは、意味をどう意識させるのか、という問題です。たとえば、What time did you get up this morning? ― I got up at seven. を教える時に、その英文を意識させるだけでなく、その意味するところ、つまり日本語訳も合わせて意識させる必要があるのではないか、ということです。そうでなければ、子どもたちが「いま何を習っているのか」について気づかないまま、ただ漫然とレッスンを受けることになってしまう、と考えたのです。

 結論から先に言えば、特に小学生以降のレッスンでは、私たちは日本語訳を意識させながら教えています。テキストには日本語訳が載っていますし、日本語訳を見せて英語に直すという練習も行います。家庭学習用のCDでも、同様の練習ができるようになっています。ただし、日本語の使用はもちろん最小限に留めています。日本語が話せる外国人講師であっても、講師自身が日本語で意味を伝えるのではなく、子ども自身にテキスト等に書かれた日本語を参照させるようにしています。外国人講師がむやみやたらと日本語を口にするのは、子どもたちをがっかりさせるからです。

 実は、「日本語を意識せずに英語を学ぶべきだ」という考え方は、大人の英語学習においては主流ではありません。しかしながら、子どもの英語学習においては、いまだに根強い支持があるようです。日本語使用を否定する立場が、児童英語教育界においても多数派でしょう。特に、外国人講師が担当するレッスンでは、「日本語禁止レッスン」が常識とされています。中には、英語習得を妨げるものとして、日本語使用を害悪のようにいう英語教室もあります。しかしながら、実際のレッスンのやり方を見てみると、「日本語禁止レッスン」であっても、実は日本語に頼っていることが分かります。子どもたちは、頭の中では日本語を使って意味を理解しているのです。少なくとも、幼稚園児や小学生はそうでしょう。

 たとえば、mother という単語を絵カードで教えるとします。子どもたちはすぐに mother という単語がお母さんを意味することを理解するでしょう。しかし、これは英語のネイティブスピーカーが mother の意味を理解する過程とは全く異なります。子どもたちは既に「お母さん」という日本語とともに、「お母さんという概念」を理解しており、その概念に mother という英語を結びつけているだけなのです。そして、日本語を見える形で使わずに済んだのは、motherが絵カードで表しやすい英単語だったからです。おそらく「cousin=いとこ」となると、絵では表しにくいので、結局は日本語を使うことになるでしょう。たとえ、絵やジェスチャーを使って何とか意味を伝えたとしても、子どもたちが「いとこ」という日本語を通して理解していることは明らかです。

 百歩譲って、上のような単純な名詞については日本語を介さずに理解できるとしても、動詞や時制などについては不可能でしょう。「日本語を介さずに英語を理解する」という状態は、外国語として英語を学ぶ環境においては、簡単に実現できるものではありません。実現できているように見えても、実際には絵カードやジェスチャーを日本語の代用として使っているにすぎないのです。だとすれば、この点に貴重な時間を割く必要はない、というのが私たちの考えです。

 日本語が併記されているオリジナル教材を導入し、レッスンのやり方を変えてから、目に見えてレッスンの成果が上がるようになりました。意味を理解させることに無駄な時間を使わないので、口頭練習により多くの時間を割くことができるようになったのです。さらに、「初歩の初歩」の先になかなか進めない、という問題も解決することができました。

効率的に学ぶ ― 「楽しい英語トレーニング」というコンセプト。

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