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4. 「楽しいレッスン」を考え直す
英語ゲームは有効か。
さて、「楽しいレッスン」を演出する方法として最も一般的なのが、英語ゲームの類でしょう。私たち自身にも、ゲームを数多く取り入れていた時期がありました。ただ現在では、レッスンに多少のゲーム性をもたせることはありますが、ビンゴ、フルーツバスケット、神経衰弱のようなものは、ほとんどやっていません。一応、英語ゲームにも多種多様なものがあるでしょうし、時と場合によっては有効かもしれない、という留保はつけておきますが、私たちがゲームの導入に消極的である理由を以下に述べます。
確かに子どもたちは、一時的には英語ゲームを楽しむかもしれません。しかし、それは英語学習から得られた楽しさでしょうか。多くの場合、英語ゲームから得られる楽しさは、本当の意味での学ぶ楽しさではないと思います。本来、学ぶ楽しさとは、学習の成果が得られた時の「分かった!」「できるようになった!」という喜びです。そして、この学ぶ楽しさが、さらなる学習意欲へとつながるのです。「英語習得は意識的な学習の成果だ」と考える以上、「楽しいレッスン」は、学ぶ楽しさを与えるもの、そして英語学習に対する意欲を高めるものであるべきです。
私たち自身の経験から言えば、ゲームを多用すると子どもたちの学ぶ意欲をスポイルしたり、あるいは子どもたちに間違った英語学習のイメージを与えたりする可能性があると思います。中学以降に必要となる英語学習の姿とかけ離れたレッスンをしていては、中学校へ上がった子どもたちが「はしごを外された」気分になるかもしれません。また、英語ゲームの多くは前述の「初歩の初歩」のレベルを念頭においたものがほとんどです。その先を目指すことを考えた場合、汎用性のある優れた指導法だとは思えません。さらに、講師の力量が不足している場合には、ゲームが単なる時間稼ぎになってしまうケースも生じるでしょう。
にもかかららず、英語ゲームがもてはやされる理由を少し考えてみます。まず、ここでも「英語を自然に身につける」という発想が影響していることは確かでしょう。しかしながら、この発想に立つこと自体に無理があることは、すでに述べました。また、児童英語教育の世界では、「子どもたちは集中力が続かないので、いろんなゲームやアクティビティを使って、手を変え品を変えレッスンを進める必要がある」、との考えが一般的かもしれません。この手を変え品を変えのやり方、およびそのネタ数が、指導上の最重要スキルだとされている印象すら受けます。しかし、子どもたちにそういう面があるにせよ、それに合わせてレッスンをすることが本当に良いのかは正直なところ疑問に思います。さらに、できるだけ英語学習の入り口を簡単に見せようという意図から、ゲームを取り入れることもあるでしょう。これは、まず英語に目を向けさせよう、興味を持たせよう、ということでしょうが、これについては次に述べます。
子どもたちにとって、英語はそもそも興味の対象。
どうすれば子どもたちが英語に興味を持つのか。この点は児童英語教育において大きなテーマとされているようです。子どもたちがまず英語に関心を示さないことには、話が始まらないからです。しかしながら、そんなに特別なことをしなくても、子どもたちは英語に興味を示す、というのが私たちの考え方です。というのも、子どもたちにとって、外国語、とりわけ世界中で通用する英語は、もともと興味の対象だと思うからです。
「自分たちとは異なる言語を話す人がいる。何を言っているのかさっぱり分からない。それが使えるようになるって、どんな感じだろう」。言語は、恐竜や宇宙と同じく好奇心を刺激するものなのです。また、サッカーやピアノの上達を夢見る子どもがいるように、「英語が使えるようになってみたい」と憧れを抱く子どもはたくさんいるのです。たとえ英語に全く興味がないように見えても、英語や外国人に触れることによって、やがて興味を示すようになるでしょう。その時期が来るのを待てばいいのです。やがて芽生えるであろう興味の芽を、無理矢理に地中から掘り起こしてはいけないと思います。
単なる興味を「学習意欲」へと育てることが大切。
問題は、英語への興味をいかに芽生えさせるのか、ではありません。その後のことです。英語への興味を、英語学習に対する意欲へと育てる、という視点が大切だと思います。英語に興味を持つだけなら、たいていの子どもは興味を持ちますし、多くの大人も英語への関心や憧れをもっています。ただ、当たり前ですが、興味を抱いているだけでは英語は身につきません。必要なのは、その興味を、英語学習への意欲、そして意欲の継続にどうやって繋げるのかという点です。
学習意欲をどう持たせるのか、というこの問題は、教育論の根本にかかわります。英語教育に限ったことではなく、学校教育全体、あるいは最近では生涯学習(人が生涯にわたり学び自らを高めていくこと)というテーマでも、この論点がよく取り上げられます。私たちがここで語るには、いささか大きすぎるテーマですが、レッスンの現場で感じることを率直に書いておきます。
学習意欲を高める「楽しい」レッスンとは。
英語レッスンを現場で観察していると、子どもたちが喜びを感じ、楽しそうな表情をするタイミングは、次の三点に集約されるように思います。一つ目は、みんなで元気に発話練習することが楽しい。二つ目は、先生や親から褒められることが楽しい。三つ目は、分かることが楽しい。この三点です。学習意欲との関連で言えば、最も重要なのは三つ目の「分かることが楽しい」です。しかし、それに到達するための基礎練習を支えるという意味で、同じく一つ目や二つ目も大切なのです。
子どもたちが、この三種類の楽しさをたくさん得られること。これがレッスンの基本であると私たちは考えています。この実践には、人間力もスキルも必要になりますが、手順自体は簡単です。すなわち、みんなで元気に練習をし、その姿を褒める。定着を試し、その成果を褒める。この繰り返しです。「英語ではこんな風に言うんだよ。練習してみようね。がんばったね。覚えられたかな。あっ、できた。すごいね。また分かる英語が増えたね。じゃあ、次もがんばってみよう。」といった感じでしょう。
学習意欲を高めるものとして、「わかった!」「できるようになった!」という喜びに勝るものはありません。英語の習得に向けてシンプルに指導する。そして、その成果を子どもたちとともに喜ぶ。これが、私たちが考えている「楽しいレッスン」のイメージです。「英語習得は意識的な学習の成果だ」と考える以上、「楽しいレッスン」は、学ぶ楽しさを与えるもの、そして英語学習に対する意欲を高めるものであるべきです。特に、英語への興味を強く持っている子どもたちには、その興味を意欲へと変えていくためにも、このような指導が必要だと感じます。そうでないと、せっかくの興味が萎みかねないからです。